シンゴジラ評価。ゴジラを巨人兵・神として描いた庵野秀明監督
2020/06/10
シンゴジラ監督・庵野秀明は、
ゴジラに一切感情移入せず、
まるで神のような存在として描いています。
最大の危機を人智を結集し乗り越えることができるのか。
この映画の基本命題です。
今日は、彼が過去に描いた世界と比較しながらシンゴジラの描かれ方を考えます。
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神の証としての破壊力
プロトンビーム=放射能光線
ジブリ映画「風の谷のナウシカ」
知ってますか。
私の大好きな作品のひとつです。
劇中、
「火の七日間」で近代化した前世界は崩壊した。
世界を焼き払い崩壊させたのは
巨人兵。

人類は自らの手で作りあげた巨人兵で
自らの世界を崩壊させてしまったのです。
以後、人類は腐海(人間が住めない一種の放射能領域)の広がりに怯えながら生きている世界。
それが「風の谷のナウシカ」なのです。
巨人兵は、巨大な爆発力を持つビーム光線を口から発射します。
おそらく火の七日間は、それによって世界は焼き払われたのでしょう。
映画では、火の七日間シーンは一瞬でしたが、
後半、瀕死の巨人兵の発するビーム光線(プロトンビーム)は、一撃であの巨大な王蟲(オーム:体長80m、ダンゴ虫を大きくしたような生物)を多数吹っ飛ばしていました。
この映画で、この巨人兵のシーンを担当したのが、庵野秀明(シンゴジラ監督)だったのです。
シンゴジラの放射能光線ですが、まさにこのプロトンビームです。
今迄のゴジラは、水蒸気状のものに火がからんでいるような光線を発していました。
ところが今度のシンゴジラ
瞬間にカミソリのような光線がすっ飛んで切り刻み爆発させる感じ。
まさにプロトンビーム。
何者もその情け容赦ない光線からは逃れられない、防ぎようがない・・・・・
神としての絶対的な力がそこにはあったのです。

生物の最進化系としてのシンゴジラ
シンゴジラも今までのゴジラ同様、何らかの生物が核廃棄物により突然変異。
しかし、シンゴジラは自己完結型の生物。
体内で自ら核分裂反応をさせてエネルギーとしています。
(つまり餌いらず)
また、水棲生物から陸棲生物へと5つの形態に変異します。
自己防衛本能も発達していて、近づいてくる危険物(シンゴジラにとって)を徹底的に排除します。
その際、体のあちこちからプロトンビームを発射するのです。
何者にも依存しない完全生命体。
私達人間より進んでいる生命体として描かれています。
要するに神ですね。
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神話にならい危機を乗り越えようとする人々
シンゴジラを倒すには核攻撃しかない。
アメリカを筆頭とした国連安全保障委員会が東京での核攻撃を決めます。
主人公である内閣官房副長官・矢口蘭堂(長谷川博己)は、核攻撃をさせまいとプロジェクトチームに1つの対ゴジラ作戦を立案します。
それが「ヤシオリ作戦」。

ドラマの中では誰もその名前の由来を質問するものはおらず、当たり前のように進行していきました。
「え、ヤシオリってどういう意味?」
映画を見ている観客はほとんどがそう思ったでしょう。
庵野監督は時々このようなことをして考えさせます。
後で調べると、
ヤシオリは漢字で書くと「八塩折」と書くようです。
この八塩折は、日本神話の中に登場するお酒の名前。
スサノオノミコトがヤマタノオロチを退治するときに、お酒が好きなヤマタノオロチを酔わせるために使ったのが、この八塩折之酒。
つまり、ゴジラに凍結凝固剤を使用するにあたって神話から取られた名前だったのです。
まさに神を倒す酒。

まとめ
庵野秀明監督は、シンゴジラを神のような絶対的な力を持つ存在。
今迄のように共感する部分(正義・親子など)が無い存在。
世界を終焉に導くために現れた神だと表現したのです。
その対立軸としての人間。

神の前での人間達の生き様を浮き彫りにしたという意味でこの映画は成功していると思います。
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